こんにちは。三重県四日市市で社会保険労務士をやっている宇佐美雅之です。
ある日、居酒屋にいると少し気になるやりとりが小耳に入りました。
退職した元社員からこんな連絡があったのです。
「私は賞与の算定期間中はきちんと在籍していた。なのに、なぜボーナスが支給されないのか?」
確かに、会社の就業規則に定められた算定期間には勤務していたものの、賞与の“支給日”にはすでに退職していた――この場合、企業側に賞与の支払い義務はあるのでしょうか?
このようなケース、実は多くの会社でも起こりうる微妙な問題です。法律的な観点からみても、判断が分かれることも…。
今回は「賞与と退職日」の関係について、改めて考えてみます。
結論
このケース結論から申し上げあると、賞与を「誰に」「どのタイミングで」支給するかは、会社のルール次第。
だからこそ、そのルールは“後出しじゃんけん”にならないように、あらかじめバシッと書いておくことが大切です。
たとえば、「賞与は支給日に在籍している人に限る(ただし、有休消化中の退職者はOK)」といった明記があれば、今回のような“あとからモヤモヤ”は回避できるはず。
会社も社員も、お互いに気持ちよくサヨナラできるように。ルール作りは「未来の円満退職」のための下ごしらえ、なのかもしれませんね。
会社側の裁量で決められる賞与ルールを明確にして運用を
つまり、賞与は“あげなきゃダメ”というものではなく、“どうあげるか”が大事なポイント。会社が自由にルールを作れる分、その自由さには責任もセットでついてきます。
ルールが曖昧だと、「もらえると思ってたのに…」「そんな話、聞いてないよ…」なんて誤解やトラブルが起こるのも時間の問題。だからこそ、賞与の仕組みは「社内の共通認識」にしておくことが、実は一番のボーナス(=信頼)になるのかもしれませんね。
トラブルを避けるために、賞与規程の見直しを
賞与支給の要件に「支給日に在籍している者」と明記している場合、支給日にすでに退職している社員には賞与を支給しなくても差し支えありません。
しかし注意が必要なのは、退職に向けて年次有給休暇を消化している社員です。この場合、形式上は在籍中となるため、賞与の支給対象に含まれる可能性があります。
とはいえ、賞与には単なる労働の対価に加え、「これからの活躍への期待」という側面も含まれていることが少なくありません。そのため、すでに退職が決まっている社員に支給することに違和感を持つ企業も多いのが実情です。
こうしたケースを防ぐためには!
賞与の支給要件に「退職のための有給休暇消化中の者を除く」といった一文を加えるなど、あらかじめ不支給の条件を明確にしておくことが重要です。
トラブルを未然に防ぎ、制度としての公平性を保つためにも、今一度、貴社の賞与規程を見直してみませんか?
小さな一文が、のちの大きな安心につながるかもしれません。
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